シンプルなプレス金型

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「だれにかけるべきかな?」E氏が返事をするまえに、P氏は、レドモンドのF氏の番号をダイヤルし、最前線からの情報を届けて大いに楽しませてやった。 E氏はP氏といっしょに、裁判所から数ブロック先にある〈キャピタル・グリル〉をめざして歩きだした。
E氏はオーバーをあずけて、引換券の番号にちらりと目をやった。 数日まえにべつのレストランへ行ったときには、引換券の番号が666で、こいつはついてると思った。
2人はすぐに席へ案内された。 E氏はラム酒とダイエットコークを注文して、それぞれにライムをひと切れとマラスキーノチェリーをつけてくれと強引に頼みこんだ。

そして、アトランティックサーモンが運ばれるのを待ちながら、裁判のことを思い起こした。 この5ヵ月間たっぷりとエネルギーを吸い取ってくれた裁判。
M社がクロームを抹殺する原因になった裁判。 M社が裁判で見せた戦略が退却や防戦ばかりだったのがくやしかった。
「全般的に見て、M社はいつもの攻撃的な姿勢をなくしていたな」E氏は言った。 闘いから逃げようとするばかりで、攻勢に出ようとしなかった。
M社は冷酷で、校滑で、攻撃的ではあるが、市場の独占力を不当に利用しているという点については無実だと思った。 「なにかのお祝いですか」ウェイターがにっこり笑った。
E氏の人生で最高にストレスのたまる経験は終わった。 いまは、会社の名誉を守るためにすこしは役に立てたという事実を味わうだけだ。

政府は、E氏がアップルに圧力をかけて、M社のやり方に従わせようとしたことを証明したといっていた。 M社がN社に圧力をかけたように。
だが、M氏のパンチはE氏の体をかすったていどだった。 ビースティ・ボーイの判定勝ちだ。
USAトゥデイの記事はこうだった。 E氏が見せた率直なアプローチは、同社のほかの証人たちにはなかったものだ。
べつのライターは、E氏が「救助に駆けつけた」と書いた。 さらにべつのライターは、M社が12人のE氏を証人席へ呼べなかったのは残念なことだと書いていた。
なんとも皮肉なことに、M社の社内で1990年代の大半を通じて山のようにトラブルを起こしてきた男が、会社にとって最高の証人だということが証明されたのだ。 E氏の大きな顔にひねくれた笑みが浮かんだ。
そう、クロームの死はまだ心にひっかかっている。 だが、少なくとも、歴史は彼に好意的だ。
E氏は輝かしい新聞報道に思いをはせた。 M社にいるおれの敵たちがこれを見ると思うと、すごく幸せな気分だよ。

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